
労務理論学会
Japan Academy of Labor and Management
労務理論学会は批判的精神に立脚しながら、人間らしい経営労務を求めて、理論と実際を研究する学会です。
全国大会情報
労務理論学会 第35回(2025年度)全国大会
名城大学(キャンパス)
2025年6月13日(金)~ 15日(日)開催
統一論題テーマ:「人的資本経営の意義と課題」
近年、人事労務管理の改革をめぐって人的資本経営が注目されている。人的資本経営の普及を促す経済産業省によれば、それは「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」だという。人的資本経営コンソーシアムなる団体も組織され、大手企業を中心に604社(2024年7月時点)が名を連ね、経済産業省と金融庁がオブザーバーとなっている。
こうした動向の火付け役となった経済産業省(2020)『持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書―人材版伊藤レポート』によれば、日本企業再生に向けて企業価値を向上させるためには、人材を消費すべき「人的資源(Human Resource)」と捉えて費用・効率の観点で管理する人材マネジメントから、価値を生み出す「人的資本(Human Capital)」と捉えて仕事や研修という形で投資して成長させる人材マネジメントへと、パラダイムチェンジが必要だという。その背景には、米国企業(S&P500)の時価総額に占める無形資産の割合が高まっていることがある。企業価値が知識やノウハウのようなソフトな要素に規定されるようになり、その中核である人的資本が重視されている。
人的資本経営の具体的なあり方については、経営戦略と人材戦略の連動が求められている。そして、経営戦略を実現するために企業内外の多様な人材に基づく動的人材ポートフォリオを形成し、経営戦略と現時点の人材のギャップを把握してリスキリングを展開することが強調される。また、人的資本経営の情報開示やそれに基づくステークホルダー(投資家)との対話が推奨される。
岸田前内閣の「新しい資本主義」のグランドデザイン(2022年)においても「人への投資と分配」「人的資本投資の開示」という形で人的資本経営が重視されてきた。それは「成長と分配の好循環」、つまり人への投資(5年間で1兆円)と成長分野への労働移動を一体的に促進し、企業価値の向上と経済成長を図ることで構造的賃上げを実現しようというものであった。そのため人材投資など非財務情報の開示が重視され、有価証券報告書における開示義務化に結び付いている。
このように、人的資本経営は日本経済・日本企業の再生を人材への投資を通じて実現しようとするものであり、その点では評価できる。また、従来十分に開示されてこなかった企業における労働者への対応状況の開示を重視するようになった点は重要な変化と言える。こうした点に注目し、人的資本経営の概念を「人を大切にする経営」と捉え研究する動きも進んできている。
では、人的資本経営の名の下に展開されている人事労務管理は、企業価値向上の手段にとどまらず、労働者の仕事・生活の改善に貢献するものとして発展していけるだろうか。批判的研究を通じて人間らしい経営労務のあり方を展望することが本学会のアイデンティティであるとすれば、こうした論点に取り組むことが重要であろう。
そこで、労務理論学会第35回全国大会統一論題では、「人的資本経営の意義と課題」をテーマに、具体的には以下の4つの視点からアプローチしたい。
①人的資本経営の背景(資本市場の動向、ガバナンス改革と人事労務管理のかかわり)
②人的資本経営の理論的位置付け(人事労務管理論、人的資源管理論、労使関係論と人的資本
経営(論)のかかわり)
③人的資本経営(人材ポートフォリオ、リスキリング、人的資本開示など)の実態
④人的資本経営と働き方改革のかかわり
本大会が、人的資本経営の理論的、実証的、歴史的な研究を深め、企業と労働者双方にとってより人間らしい経営労務のあり方を追求するための重要な一歩となることを期待しております。
第35回全国大会プログラム委員会を代表して
島内 高太(拓殖大学)
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労務理論学会
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